はきだめにつる

きままに

さよなら帝国劇場

 いよいよ帝国劇場が閉館を迎える今日、私はというと昨年9月頭の『モーツァルト!』で現・帝劇との別れを早々に済ませ、実感のないままお茶の間で最後の瞬間を見守っている。

 2016年版『エリザベート』から約9年間、私にとって帝国劇場の扉の先は、いつだって夢の世界への入口だった。めくるめく死へのいざない、きらめく音符のつまった宝箱、星座をのせて回る盆舞台、断頭台でさしのべられた手のひら、そして空を舞う蝶ネクタイ(笑うところ)。扉の先々で出会う世界に魅了され、何度も泣き、笑い、感動と高揚感を両手いっぱいに抱えては帰路に着く、特別な劇場。
 足を運んだ回数はそれほど多くはないけれど、思い出のつまった帝劇の閉館によせて、当時のツイートや感想を掘りおこしながら思い出を振り返っていきたい。古川雄大さんについての感想がほとんどです。ひとつの記事にまとめたかったので、項目ごとの感想も長くなってしまった……。




エリザベート(2016)




 はじめての帝劇が外観装飾あり、垂れ幕あり、パネルありのラッピングもりもり作品だったので、これが当たり前だと思い込んでいたけどまったくそんなことはなかった。ラッピングはあったりなかったりする。エリザベートのプリンシパル大集合全身パネルがとても好きだったのでいつの日か復活してほしい。

 2014年の宝塚花組版(いわゆる’14花組)をDVDで視聴してはいたものの、東宝版エリザベートはまったくの別物だった。まず主演がトートでないことが衝撃だったし、舞台上の人数もこのうえなく多い。初見はやっとの思いで自力確保した2階のB席だったけれど、それでもアンサンブルやトートダンサーズの一糸乱れぬ動きが大きなうねりとなって迫ってくるようだった。一瞬で『エリザベート』の虜になった。ああ、夢にまで見たUn grande amore! はじめての帝劇で、はじめて見る『エリザベート』は、グラミュビギナーだった私の人生観をたちまち塗り替え、約9年後の今もなお、脳内麻薬を求めて劇場をさまよう観劇おたくへと変貌させた。亡者たちの歌う「我ら息絶えし者ども」を客席で浴びた瞬間の、全身を雷に打たれたような衝撃はきっと死ぬまで覚えているだろう。


 観劇した日はシシィ役・蘭乃はなさんの初日公演だった。カーテンコールでの初日あいさつのあと、最後にもういちど舞台に登場した城田さんと蘭乃さんが、スタオベの客席を見てほっとしたような表情を浮かべていたのが印象深い。

 帰りの新幹線で元気にチケットを追加していて笑う。あなた9年後も帰りの新幹線で同じことしてますよ。



 泣きの二回目。どうしてももう一回エリザベートが見たくて、キャストは二の次でチケットを譲ってもらった。ここでWキャストの沼に落ちる。どちらのルドルフも甲乙つけがたいほど良かった。古川ルドルフは意思の強い瞳が印象的で、死の接吻も力強く、みずから死に向かっていく潔さがあった。京本ルドルフは幼少期の孤独を引きずったまま大人になったような印象で、シシィに拒絶され、死(トート)につけこまれて事切れていく儚さを感じた。どちらのルドルフも大好き。

 この公演では映像収録のアナウンスがあり、結構な数のカメラが客席に設置されていた。映像化が当たり前ではない海外版権のミュージカルで、はじめて観たシーズンの公演が「空前絶後のご熱望」によってDVDとして残るなんて、われながら幸運すぎるだろう。




レディ・ベス(2017)

 ベスでもラッピングの景気が良かった。ライトの反射とさんざん格闘したあげく、うまく撮るのをあきらめた写真だが供養しておく。


 はじめてのイープラス貸切でチケットを入手。ビギナーズラックでやたらと席が良かった。




 自分の中では長年キャストは良かったけど話はよくわからん作品という位置づけだった『レディ・ベス』だが、最近『SIX』の予習のために漫画『セシルの女王』を読み、アン・ブーリンやメアリー1世、ロジャー・アスカムに対する解像度が高まったところでベスを見返したら面白かった。前後関係が頭に入っているか否かで印象が変わる作品だと思うので、DVDをお持ちの方はぜひ『セシルの女王』を読んでみてほしい。



 古川フェリペに脳みそを焼かれていた模様。そりゃあ焼かれるよこの美しさだもの。

 脚本は掴みどころのない感じだったけど、花總まりさんは気品あふれる芝居でベスの半生を演じきり、「闇を恐れずに」で見せる決意の表情にはベスのこの先の人生までも想起させる威厳と風格があった。

 衣裳を担当された生澤美子さんのインタビュー(2014初演時)によると、ドレスの色とベスの心情の変化がリンクしていたり、メアリーのティアラが型から製作されていたりするらしい。豪華でこだわり抜かれた衣装がほんとうに素敵だった。このまま眠らせておくにはもったいない衣装の数々………。MAみたいに再演しないかなぁ。


モーツァルト!(2018)

 ついに古川さんがタイトルロールに抜擢されるということで解禁から楽しみで……! 前回公演のDVDが出ていたので山崎育三郎さんのバージョンを買い、繰り返し見て観劇当日に臨んだ。

 舞台の上には孤独に抗い、絶望のなかで懸命にもがくヴォルフガングがいた。歌唱につたなさは残るものの、特徴的な声質が役柄とはまり、たちまち古川さんのヴォルフガングに夢中になった。「僕はウィーンに残る」の「自由だーーー!!!」のロングトーンがあまりに伸びやかで、本調子ではなさそうな公演のときもこのロングトーンだけはどこまでも美しく響きわたっていた。一幕から全力投球なので二幕の憔悴が真に迫り、毎公演命を削りながらヴォルフガングの人生を生き抜く古川さんの熱演に胸を打たれた。


 どうしても平野さんのコンスタンツェが見たくて確保した日の公演。2018年以降にコンスタンツェを演じた4人のなかで、私は平野綾さんのコンスタンツェがいっとう好きだ。4人それぞれに魅力的なのだが、平野さんのコンスタンツェには凡人ゆえの悲哀がとても濃い印象がある。理想と現実のはざまでもがき、天才の夫を支えきれない苦悩と嫉妬をにじませる。常人の理解の範疇をとっくに越えてしまった夫を震える声で引き止め、「あなたが愛しているのは自分の才能だけだもの」とヴォルフを傷つける言葉をぶつけながら、反動で自分が誰よりも傷ついていた。「才能より愛される妻にはなれない」が悲しみと怒りに満ちていて、ヴォルフへの愛と才能への嫉妬でぐちゃぐちゃになった平野コンスが大好きでした。なんでM!2018DVDになってないんだよ………!!泣

 古川さんは盛れてないって言うけど*1私はM!2018のビジュアルがいちばん好き。M!2018以降は装飾がなくなってしまったので、古川ヴォルフにとっては最初で最後の帝劇ラッピングだった。


(余談)
 6/1にナイツテイルの号外を配っていたらしい。職場のジャニヲタにあげてしまって残念ながら手元には残っていないけど、終演後に帝劇を出たら渡されて、なんだこれ?と思いながら持ち帰ってきた思い出。


マリー・アントワネット(2018)


 花總マリー・古川フェルセンの組み合わせで見た。致死量の美。
 花が咲くように笑みをこぼし、扇で口元をかくす花總マリーの美しさといったら……! ミルクに紅ばらの花びらを浮かべたようとはまさにこのこと。かりそめの夢に閉じこもり、現実から目をそらし続ける花總マリーと、全身に怒りをたたえ、今にも焼ききれてしまいそうな熱量で訴える昆マルグリットの対比が凄まじかった。マリーやマルグリットが飲みこまれてゆく革命の濁流の最中で一幕が終わり、緞帳に投影されたMAロゴの背景にフランス国旗が加わっているのを見てぞっとした。なにより記憶にこびりついているのが裁判の場面で、ただそこに黙って座しているだけで場の空気を支配してしまう花總マリーの姿が史実のマリー・アントワネットそのものに見えた。


 シャンテのパネル展にようやく該当して有頂天で撮ってきた古川フェルセン。花總さんのマリーとならびたつと発光したように美しく、マリーとフェルセンの恋がかりそめの夢であることを忘れてしまう。影をおびた役作りもマリーとの悲劇を引き立てていて好きだった。


エリザベート(2019)

 この喜びようである。M!の抜擢で予感はあったものの、古川さんのトートが現実になると思ったらめちゃくちゃ嬉しかった。



 奇跡が起こり、とんでもない席で古川さんのトート就任を見届け、念願だった成河ルキーニもようやく見られて、今日ここで人生が終わったとしても悔いはないと思えた公演だった。2016公演時に二階席から指をくわえて見ていたキッチュの紙幣が頭上を舞い、ひらひらと膝に落ちてきた一枚を震える手でパンフレットに挟んだことを覚えている。

 三年越しにお目にかかれた成河ルキーニは期待以上で、狂言回しとして場を掌握しつつ「皇后エリザベート」の物語を土足で好き勝手に踏みにじっては中指を立てるような醜悪さがあった。民衆を扇動したかと思えばそのなかに紛れ、ぞっとするほど冷たい目をして笑っている。その落差に夢中になり、ルキーニの出ている場面は成河さんのルキーニから目が離せなかった。今期から登板した愛希れいかさんのシシィも強く、古川さんも負けじと食らいつくのでなんだかめちゃくちゃ濃いものを見たな……という印象がある。

 古川さんのトートは外見こそ高貴な猫のようだったが、人ならざる者の不気味さを備え、はじめての恋に浮かれる怪物という感じの趣きもあってとても良かった。古川さんが黄泉の帝王として舞台に立ち、アレンジを交えながらトートのナンバーを歌いこなす姿に感無量だった。


 『ラ・カージュ・オ・フォール』での木村達成くんがとても良かったので、今回はルドルフを固定で見ようと決めていた。達成ルドルフは自決の場面でかすかに笑みを浮かべる。それは自嘲のようでも救いのようでもあり、引き金を引く瞬間に血しぶきのごとく飛び散る汗が見事だった。

 カーテンコールがね……もうかわいくって……! ルドルフ役の達成くんと少年ルドルフ役の加藤憲史郎くんがなにかとじゃれ合って楽しそうにしていたのが癒しだった。


 シャンテのコラボフードもお祭りっぽくて楽しかった。



モーツァルト!(2021)


 緊急事態宣言発出による公演中止のため二枚のチケットが一瞬にして紙きれと化した2021M!だったが、幸運にも公演が打ち切りとなる前日に一公演だけ観ることができた。忘れもしない4月26日の昼公演。この日の夜公演では山崎さんが、翌日の昼公演では古川さんがそれぞれ一週間ほど繰り上げて帝劇千秋楽を迎えた。はかりしれないほどの思いがあっただろうに、つとめて普段どおりに公演を届けてくれたことに感謝しかない。



 翌日以降の公演中止を受け、ロビーには異様な空気が漂っていた。密集を防ぐためか外装や垂れ幕などはなく、代わりにおかれていたのは会話禁止の看板のみ。半分あきらめていた公演を見られるだけでもいいと思ってやって来たものの、この時点でだいぶ気持ちが沈んでしまっていた。


 帰ってきた古川ヴォルフはひと回りもふた回りも大きく強くなっていた。さみしさを含んだ声音はそのままに、音域が安定したことでどの音も伸びやかに響き、一幕の奔放なヴォルフガングに磨きがかかっていた。2018年版では深い絶望のなかで泣き叫ぶようだった「何故愛せないの?」も、2021年版では凪いだ水面のようにしずかな失望と諦念を感じた。

 三年前のいまにも崩れてしまいそうにもろかったヴォルフはどこへやら、アマデと対等に渡り合い、綺羅星のようにひかめく音楽家がそこにいた。ヴォルフの光量が増したぶん、その足元にひろがる影もより濃く深くなる。「影」の役割を担うレオポルトとナンネールも容赦なくヴォルフを追いつめ、モーツァルト一家の機能不全家族感が際立っていた。2021M!の市村レオポルト怖くて大好き。

 帝劇では公演が打ち切られ、地方公演の幕が開くかすらもわからず客席に不安が広がるなか、この日の公演が、リーヴァイ節のきいた名曲の数々が、観客にとってどれほど救いだったか知れない。涙でびしゃびしゃになったマスクをハンカチで必死におさえながら、決死の思いで公演をつないでいくこの座組が、どうか明日までの公演だけでも無事に完走できるようにと祈った。音楽は魔法のように万能ではないかもしれないが、あの日の私にとってはまぎれもなく慰めであり救いだった。


エリザベート(2022)


 地方を含めた全公演が中止となってしまった2020年版『エリザベート』ではすべての組み合わせを網羅すべくはりきってチケットを確保していたものの、手元のチケットを払い戻ししているうちに心がぽっきりと折れ、再演の告知があったときにはリベンジに燃えるどころかたった一公演を申し込むのもやっとの落ち込みようだった。それでも約三年ぶりに客席で聞く「我ら息絶えし者ども」にはこみあげるものがあり、エリザベート2020への期待に胸をふくらませた気持ちがよみがえってきた。エリザベートってやっぱりサイコ~! エーヤンエーヤンエリザベート!!

 観終わってすぐに次のチケットを探して右往左往していたものの、数日のうちに帝劇千秋楽を含めた公演のほとんどが中止となってしまい、M!2021の悪夢を思い出して落ち込んだ。

 2019公演の時点ですでに完成されていた愛希れいかさんのシシィはさらに輝きを増し、少女から晩年までを見事に生き抜いていた。凛として美しく聡明だけれど、自由を求めるあまり孤独を深めてゆくシシィが、死ぬことでようやくがんじがらめの現世から解放される。トートを拒絶する愛希シシィと古川トートのデュエットには、死闘さながらの熱量があった。幾度となく死闘を繰り広げた末、トートの腕に飛び込む瞬間の満ち足りた表情は歴戦の戦士が死の間際に浮かべるやすらぎのようで、それを受け止める古川トートのいつくしむようなまなざしと、シシィが目を閉じたあとのトートの表情に胸がざわめいた。

 愛希シシィのほとばしる熱に呼応するように古川トートもまた獰猛さを増していた。シシィの内から生まれた死への渇望、それがトートという存在だと思っていたけれど、「死」そのものに対する解釈が深化し、蹂躙するような圧倒的「死」の表現に、どうしようもなく降りかかる災害めいたものを感じた。「最後のダンス」の劇場全体をふるわすフェイクでは鳥肌が立ち、古川さんの表現したかったトートの理想像に彼の技術と自信が追いついたのかもしれないと思った。感情表現もいままで見てきたなかでいちばん豊かで、激情的な愛希シシィを映し出す合わせ鏡のようなトートだった。

 どうしたって成河ルキーニの影を求めてしまうのだが、上山竜治さんのルキーニもとても好きなルキーニだった。みずからの描く脚本の上を綱渡りのように歩き、行き交う群衆のなかで所在なくたたずむ姿には、狂言まわしというよりひとりの人間としての脆さを感じた。突飛な動きも芝居がかった動作もしないからこそ気味が悪いほど等身大で、しずかな殺意をやどした目だけがぬめるように光り、“Prego!”の台詞を発したあと、フィルムが流れるように再生されていく登場人物たちのなかで、ひときわ異質な存在感を放っていた。ルキーニってアジってなんぼの印象があるので、トートとシシィの再現劇に救いを求めるようなルキーニ像が新鮮だった。どの場面か忘れてしまったけど、大口を開けて笑いながら「シーッ」と人さし指を立てておどける上山ルキーニがかわいくて好きだった。


ミュージカル・ピカレスク「LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」(2023)





 古川雄大さんの帝劇初単独主演作! おめでとうございます!! 垂れ幕をみるのも『エリザベート(2019)』ぶりだったので嬉しかった。

 ひたすらに明るいエンタメの波状攻撃で、一年前には黄泉の帝王として帝劇に君臨していた古川さんが、ぴかぴか光る蝶ネクタイで空を飛ぶなんて誰が想像しただろうか………! 「おたくの見たい古川雄大特盛全部載せ」とか「帝劇で見る白昼夢」とか「古川雄大トップスターお披露目公演」とか言われていたけど、全部「そう」だったので「そう」としか言えない。まさかこういう毛色の作品が単独主演作になるとは思っていなかったので驚いたけど、古川さんが楽しそうに七変化している姿を見て、幸せならOKです! と心のなかで親指を立てた。

 黒執事リコリス再演から古川さんの出演作をちょこちょこ見るようになったので、こしゃく*2やセバスチャンのマントを彷彿とさせる要素がふんだんに散りばめられていて、なんてぜいたくなシネマティックレコード*3なんだろう……と感慨にひたっていた。のに、アネットちゃんが登場した瞬間さすがに声が出そうになった。

 脇を固めるキャストも手がたく、真彩希帆さんのクラリスはとても愛らしかったし、真風涼帆さんのすらりとしたドレス姿はため息が出るほど美しかった。古川雄大さんの主演作を盛りたてて良いものにしよう、という気概が舞台上からあふれていて、とても良いカンパニーだなと幸せな気持ちになった。

 エリザベートのマデレーネ役であまりのかわいさにたびたび視線を奪われた美麗さんがルパンにもご出演されていて、出ている場面はとにかくかわいくてつい目で追ってしまった。黒鷲団で男装をしている場面もひときわしなやかで素敵でした。


モーツァルト!(2024)

 古川ヴォルフ三度目の帰還。『モーツァルト!』は古川さんが帝国劇場の舞台に刻んできた奮闘の歴史でもある。トートのリベンジも帝劇の単独主演も果たした古川さんがどんな集大成を迎えるのか、幕が上がるのを心待ちにしていた。


 観劇当日、まさかこれほどの振り幅があったなんて………! と何度も衝撃を受けた。ヴォルフガングの内からとめどなくあふれる感情のすべてが歌声となって濁流のようにおしよせ、びりびりと空気をふるわす音圧に驚かされた。三度目にして「僕こそ音楽」をこれでもかと体現するヴォルフガング。正直古川さんに対して「歌の人」という印象はあまりなかったのだが、めちゃくちゃ「歌の人」だったので放心してしまった。

 ヴォルフガングの苦悩が全面的に出ていたこれまでの公演と比べ、今期は周囲の人びととの関係性がそれぞれに濃く、レオポルトやナンネール、コンスタンツェ、それぞれに愛情深く接していたように見えた。どれだけいびつでも与えられた愛に応え、みずからも愛を注ごうと試みるヴォルフガングだが、アマデ(才能)はそんなもの不要とばかりにいっさい興味を示さない。父の死を告げられた途端、解き放たれたように鬼気迫る表情でペンを走らせるアマデをこれまで何度も見てきたはずなのに、なんて残酷なのだろうと思った。「モーツァルトの混乱」では顔の右側と左側で表情がちぐはぐになっていたのが印象的で、どこまでが演技でどこまでがそうでないのかわからないほど古川さん自身とヴォルフガングが深く同化していた。ここまで役を理解し、自分の血肉とするまでにどれほどの努力を重ねてきたのだろう。古川さんと『モーツァルト!』の、これまでの軌跡をていねいにたどるような公演を目撃できて幸せだった。

 M!に関しては書き足りないのでまたいずれ書くやも。

 帝劇コンでまた来るかもな〜とのんきに構えていたくせに、めずらしくM!でインペリアルカフェに行っていた。友人を連れていきたかったからなのだが、帝劇に来る最後の日だという予感が無意識に働いたのかもしれない。




さいごに(帝劇とわたし)

 ここからは余談として私自身の話をします。読み飛ばしてくださってかまいません。

 この記事を書きはじめたのはちょうど帝劇コンの初日、2月14日の夜だった。帝劇コンのセトリに沸き返るTLを眺めながら、フィナーレの列に加わることはできなかったけれど、帝劇で自分が見てきたものをかたちに残しておきたくなってはてなブログの編集画面を開いた。それからは昔のTwittwerのアカウントをひたすらさかのぼり、Googleフォトに残っている写真や、膨大なスクショと向き合う日々だった。当日の記憶がよみがえるたびに言いようのない思いがこみあげてはなつかしくなり、エリザベート2019あたりから明らかに分量がバグり始め、はたして閉館当日までに書きあがるのだろうかという不安と戦いながらキーボードを叩き続けた。(卒論?)おわったよ~~~~!やったね~~~~!!!


 ここまで読んでくださった方(いるのだろうか)はお察しのとおり、私は古川雄大さんの出演作以外は帝劇に足を運んでおらず、レミゼやサイゴン、SHOCKなどの往年の名作を劇場で観たことがないどころか帝劇コンもまあいいやという感じのにわかミュージカルファンである。そんな私がうっかり帝国劇場の扉をくぐることになったのは、やはり古川さんと花組エリザベートの存在が大きい。黒執事リコリス2014でAKANE LIVさん演じるマダム・レッドに衝撃を受け、翌年のリコリス再演を見に行って古川さん演じるセバスチャンに心を奪われたこと。それから、ヅカバサを経て花組エリザベートに出会い、エリザベートを劇場で見たくてしかたなかったこと。思いがけないタイミングでふたつの要素が交わり合い(残念ながら2015年の公演には間に合わなかったけれど)なにもわからないなりにエリザベートのチケットを押さえた9年前の自分に感謝を伝えたい。おかげでいまだに日比谷周辺をさまよっています。

 そして、エリザベートのルドルフにはじまり三度目のヴォルフガングにいたるまで、長い道のりに途中乗車させてもらい、帝劇という夢の世界でなんども魅了してくれた古川雄大さんにはものすごく感謝している。舞台で拝見するたびに輝きと自信を増し、スターへの階段を全速力で駆け上がってゆく姿をみられるのがいつだって楽しみだった。生まれ変わった帝劇でもきっとその素敵な歌声を響かせてくれることでしょう。


 「ミュージカルデイ」の中継で、歴代のヴォルフガングと市村パパの「僕こそ音楽」が聴けたことも、金の紙吹雪が舞うなか帝劇最後の瞬間を待つ古川さんと平野さんの2016M!コンビにも感無量だった。


 かえすがえすも夢のような9年間でした。多くの人でごった返すロビーも、オレンジのやわらかな光を灯すライトも、重厚なたたずまいに似つかわしくないサイネージ看板も(笑)、荘厳で美しいステンドグラスも、入場してすぐ並ばないと入れないカフェも、むらさきに染まった客席も、めちゃくちゃ並ぶトイレも、トイレに案内係のお姉さんがいたことも、そして肉まんの味も。すべてがなくなってしまっても忘れずにいられるように。肉まんは帝劇展で食べられるらしいですが………(うれしい)

 まさか閉館の半年も前にお別れすることになるとは思っていなかったけど、お茶の間で最後の瞬間を見届けられてよかった。明日から解体作業がはじまるということで、もう日比谷に行っても見知った姿じゃないかもしれないことがさびしくてたまらないけど、またいつかこの場所で新たな夢が見られることを願って。

 ありがとう帝国劇場、さようなら。5年後(?)の新帝劇コンには呼んでな!!(古川さんを!!)

*1:2024年版公演での発言より

*2:黒執事の登場人物、ドルイット子爵の愛称。

*3:黒執事に登場する人間の走馬灯のようなものを指す名称

『今月の宮下雄也 vol.88【先輩と〇〇】』に行ってきた/ロフトプラスワン座席レポ

 青天の霹靂ってこういうことだ。ゲスト発表に動揺して5年間も放置していたはてなブログの編集画面を開いてしまうくらいには、脳内が混迷をきわめていた。チケ発の当日は取引先のまあまあ大切な催しに参加していたのだが、腹痛を装ってトイレに行き、死にものぐるいでチケットを取った。(最悪社会人)


 そんなわけで、新宿ロフトプラスワンにて開催された「今月の宮下雄也 vol.88【先輩と〇〇】」に参加してきました。


 「今月の宮下雄也」は、俳優の宮下雄也さんが2015年から毎月開催している*1オールナイトトークイベントで、今回が88回目の開催にあたる。ゲストの【先輩】というのは、舞台「戦国BASARA」シリーズの共演者でもある久保田悠来さん、中村誠治郎さん、谷口賢志さんの三名を指し、全員が一堂に会するのは舞台「戦国BASARA3」-瀬戸内響嵐-(2012)以来である。あの頃の思い出や今だから話せること、現在のそれぞれの活躍と私生活について、ほんとうにたくさんの話を聞くことができた。
 久保田さん(推し)は舞台「戦国BASARA」シリーズを卒業して以降、おそらく意図的に当時のことについて触れてこなかったと思っているので、久保田さんがあの頃の話を、宝物みたいに話す姿をみて、ものすごく満ち足りた気持ちになった。いまだに久保田さんのXのヘッダーは武将祭2013のままで、あれから11年が経つけど、おたくが有明コロシアムにひろがる星の海*2をいまでも鮮明に思い出せるように、久保田さんや出演者の皆さんのなかで、舞バサという作品がいまでも青春のきらめきをまとっていることがわかってうれしかった。レポ禁なので内容は書けないけど、めちゃくちゃ楽しかったし、また絶対に遊びに行きたい。


宮下雄也、多才すぎる

 はじめて参加したけど、登場から宮下さんに圧倒されっぱなしだった。
 歌もトークも進行も絵も、自作の漫画(新作描き下ろし)の朗読もうまくて、企画や話題のチョイスもよく、毎月来てくれるお客さんのことが大好きで、役者としての信念もめんどくさいところも可愛らしさもある。今回のイベントは宮下さんが出演中のミュージカル「DEATH TAKES A HOLIDAY」の東京公演と大阪公演のあいだの開催なのだが、舞台の本番とゲストのブッキングや企画立て、漫画の制作などを同時平行していたらしい。超人?

 参加のきっかけは久保田さんのゲスト出演だったけど、目の前で繰り広げられる宮下さんの縦横無尽な仕事ぶりを眺めているだけでも楽しかった。

 イベント前に雰囲気が知りたくて過去の参加者の感想をさかのぼってみたものの、「楽しかった!」という内容のものが多く(わかる)、会場の雰囲気などは謎につつまれていたので、会場に到着してからの流れと、座席や会場の導線について書いてみた。これからも末永く続いていくイベントになると思うので、はじめて参加するよ!という方の参考になったらうれしい。


会場について

 『今月の宮下雄也』が定期開催されているロフトプラスワンは、アイラブ歌舞伎町のビルの地下2階にある。

 TOHOビル側で友人と開場を待っていると、ネオンサインの下におたくが集っていくのがわかった。うちら、歌舞伎町からめちゃくちゃ浮いているので一瞬で“同族”だとわかる。おたくの集団のおかげで旧日本青年館のロビーにいるかのような安心感につつまれ、犬も歩けばキャッチにあたる歌舞伎町を歩いて枯渇した体力が回復した。


集合から開場まで

 23:40ごろになると整理番号順に呼ばれ、ロフトプラスワンのある地下2階から上の階へと階段に沿って列が形成される。
 30名ほどの優先入場者*3のあと、一般チケットの1番から順に10番区切りで入場していくのだが、24:00を過ぎた頃には一般20番台の自分たちも席を確保していたので、おそらく24:30ごろにはほぼ全員が入場できていたと思う。会場周辺は治安がよくないので、開場時間の5〜10分くらい前に会場到着でちょうど良い気がする。(30分前に着いてしまった人)


ロフトプラスワン座席レポ


 ※ロフトプラスワン公式よりフロアマップをお借りしました。

 数々のイベントを打っている会場なのでいまさらではありますが、ロフトプラスワンに突然推しが呼ばれてしまったときの参考になれば…!!

 わたしが座った手前側のソファー席はドリンク列の導線から外れており、背もたれとテーブルのおかげでたいへん快適に過ごすことができた。が、前列の人の頭で演者が見切れるという事態が発生し、やむなくアウターを敷いて座高のかさ上げをした。オールナイトに日和って壁際のソファー席を死守したけど、出演者の顔をしっかり見たいなら絶対に正面に座ったほうがいい。正面の席は椅子と椅子の間が狭く、背もたれのない椅子も多かったので、長時間を過ごすにはあまり向いていない。おのれの体力と要相談だが、基本的には正面から埋まっていくので整番が遅いと座れない場合もある。
 手前のソファー席や本棚横など、ステージの死角となる席にはモニターが設置されていたけど、出演者ばかりが映るわけではないし、映っていてもフレームアウトする出演者もいたので善し悪しという感じ。あとたぶんソファー側の2列目以降は出演者から見えてない。はけるときに気づいておのれのおたくにファンサをしてた出演者がいたので、出席確認するタイプの出演者ならばおたくも正面に座ったほうがWin-Winだと思う。


導線について

 自分たちが入場した時点でおよそ50人ほどがフロアにいた。席を確保する人、ドリンク列に並ぶ人、ドリンクを受け取り席に戻りたい人、新たに入場してくる人…でフロアがごった返しており、すでにドリンクカウンターには長蛇の列ができていた。開場から開演まで一時間以上あるとはいえ、のんびりしているとドリンクを受け取りそびれてしまうので、ドリンク列にはすぐに並んだほうが良い。

 入口の導線とドリンク列の最後尾が被っていたため、入場してきた人はどの席が空いているか(ドリンク列の人混みで)見えず、ソファー席があるエリアとそれ以外がドリンク列で分断されていたので、ソファー席側にはそれなりに空席があるにもかかわらず、みんな席を求めてさ迷うというシュールな状況が生まれていた。

 ちょくちょく挟まれる休憩時間中、トイレやドリンクに並んだまま席に戻ってこれない状況が多発しており、劇場などのスムーズなトイレ導線に慣れていると若干のつらさがあった。

 長丁場ではあるものの、できればトイレは会場に入る前に済ませてから来るといいかも。ドリンクも何杯か飲んだり出演者に差し入れしたい場合*4は、最初の一回でまとめてオーダーすると良さそう。


雑感


 メニューのクセ。なんでレッツパーリー(伊達政宗)がウーロンハイなんだろう……と思ってたけど、もしかして(烏)龍=独眼竜ってコト……!?

 ロフトプラスワンのフードは普通に美味い。ロフトプラスワンといえばカレーと梅炒飯というイメージがあり、ラストオーダーでカレー食べる!と友人に宣言をかましていたものの、揚げ物で胃にダメージをくらったためあえなく断念した。


 宮下さんの熱唱から幕をあけたイベントだったが、ゲスト陣の登場BGMがあまりに懐かしく、選曲が完全に不意打ちのそれだったので感極まってしまい、推し以外はなんの曲だったかちゃんと覚えているのに推しの登場BGMだけ記憶からすっぽり消し飛んだ。

 俳優も聖人君子ではないので、酒にやられてめちゃくちゃになった人と、それをなんとか収拾させようと奮闘する人、持論を展開する人、その間で粛々と飲み続ける人とさまざまで、久保田さんは黙っているだけで徳が積み上がっていくのがおもしろかった。

 なんだかんだトーク中は推しの動向に注目してしまったけど、バーイベやFCの配信ではかなり意識的に“久保田悠来”をやってくれていることも、気のおけない共演者との間ではそれがほんのすこしだけ薄まることも、話題に対する一歩引いた視点も、あらゆる面で分別がついていて、久保田さん、大人になったなあ…(※43歳)としみじみ思った。周囲がヒートアップしても本人は失言らしい失言をしないので、社会性と人間力の高さを見せつけられた気がした。

 誠治郎さんはその場にいるだけでぱっと空気が明るくなり、いろんな話題が飛び出すなかでちいかわみたいにあわあわしている場面が多く、何年経ってもかわいい人だなとほほえましかった。

 賢志さんは………どうか心身の健康に気をつけてね……………。もしかしたら場を盛り上げようと意図的にあのポジションに収まりにいったような気がして、賢志さんらしいな〜と思った。いやわからん、すみません、賢志さんの有識者の方いかがでしたか?

 主催兼MCの宮下さんはずっと観客の前にいて、このハイカロリーなイベントをひとりで練り上げているその胆力に感動してしまった。MCとして各ゲストへの話題の振り方も上手く、さすが88回も続いているイベントの大黒柱だと思った。

 ゲスト陣の小休憩コーナーで登場されたエレキコミックの今立さんと宮下さんのトークもゆるくておもしろかった。ロフトプラスワンらしいサブカル純度の高いコーナーで、題材も良く、宮下さんと今立さんふたりだけのトークイベントがあったらぜひ参加してみたい。ニコニコ動画世代なので、題材とふたりの掛け合いにノスタルジーを感じた。


 宮下さんがさまざまな話題を取り上げる中で、俳優側にその視点があったんだ!と驚いたり、俳優のおたくをしていて身につまされることも、自分が足を運んで観た作品や役者がたくさんの人に評価されてほしいと思うこともたくさんあるので、あらためて考えるきっかけをもらえて良かったと思った。

 でもひとつだけ、観客として言いたいことがある! 製作側に良いものを作ったという自負があるなら、めちゃくちゃおもしろいから絶対に現地に来い! くらいの大言壮語をかましてほしい! 観客には無限の選択肢があり、お金は有限だから、作り手がおもしろいと発信してくれないものを観に行こうとは思えないんだよ!!!(「戦隊大失格」ザ・ショーの話をしています)


 前半のテンションが嘘みたいに最後はやたら真面目な話でしんみり締めるところも、飲み会の終わりみたいで良かったし、まるで出演者の皆さんの飲み会に聞き耳を立てているような感じで楽しかった。


おわりに

 朝5時にロフトプラスワンから解放されて駅まで歩いていたら、朝ホストのキャッチが大量にいて暗い気持ちになったし、歌舞伎町に何時間経っても馴染めない初老のおたくたちがよろよろと新宿駅まで歩いていくのはゾンビ映画みたいでなんか良かった。


 約10年ぶりに大好きなメンバーが揃ったので、戦国BASARAイメージのアレンジ花を出しました。伊達政宗カラーの青をベースに、小早川の赤、明智の桔梗色、石田の藤色と、花火っぽいスモークグラスのイメージ。まさか令和に伊達政宗(と戦国BASARA)のイメージカラーの花を出すことになるとは……もしかしてまだ平成なのかも…………

*1:コロナ禍による休止を含む

*2:舞台「戦国BASARA」武将祭2013/有明コロシアムで開催された舞台「戦国BASARA」のキャストトークイベント。殺陣ありトークあり宴会芸ありのイベントで、キャストが歌うわけでもないのに観客は全員キャラクターのイメージカラーのペンライトを持参していたし、伊達政宗真田幸村にいたっては公式から微妙に似てない似顔絵つきのペンライトがイベントのグッズとして発売された。

*3:当日会場に来た人限定で次回の先行に参加でき、優先入場の特典がある。

*4:イベントによるが、ロフト系列は出演者にドリンクの差し入れができる。

Google Pixel 4で推しを撮ってみた





はじめに

【本エントリ内で使用している画像について】
12月1日に行われたイベント中の許諾に基づきSNSはてなブログ)に掲載しておりますが、万が一然るべきところより警告があった場合には即刻画像を削除させて頂きます。



‐‐‐‐‐



 日プの沼へ頭のてっぺんまで浸かりつつ、今年も推しの久保田悠来さんのイベントへ行ってまいりました。

 ここ数年は久保田さんの誕生月である6月前後と、年末年始が恒例となっているファンイベント。久保田さんと事務所側のご好意により、イベント中には撮影タイムが設けられている。ツーショよりも推しを単体で残したい派のわたしにとっては神のサービスなので、ツーショは最悪なくなってもいいから撮影タイムだけは継続してほしい。

 しかし、おたくの構えるカメラの画角にまんべんなく収まれるよう会場内を隅々まで練り歩く推し(優しい)(好き)を撮影するにあたって、最近までわたしが使用していたスマホのカメラは非常に脆弱だった。



 モザイクは別として、被写体がブレている上画質がガビガビ。画質がクソでも推しの顔は天才(それはそう)

 一眼やコンデジを持ち、推しを高画質で残すことに命をかけるお姉様がたもいらっしゃるが、粗雑な自分に高価なカメラは豚に真珠と思い、手が出せないでいた。ただでさえ遠征で毎回荷物が多いのにレンズの管理までできないし(本音)余ったチケットでプロのカメラマンを雇うことも考えたが、グレーすぎるのでさすがに止めた。今回イベントを控えたタイミングで運悪くスマホのカメラアプリが起動しなくなってしまったため、重い腰を上げてスマホを買い換えることにした。

 Android派なのでめちゃくちゃ候補が多く、一生頭を抱えるおたく。カメラに比重をおいていろいろレビューを読み漁っていたところ、こちらのエントリに辿り着き、Pixel 3aを最有力候補としてショップへ向かった。

 そこで一目惚れしたのが今回購入したGoogle Pixel 4。廉価版のPixel 3aでも充分かなと思ったけれど、より高精度な写真を撮れるという4に軍配が上がった。

 日常的に使用する上でもかなり助かっているけど、今回はカメラ機能のみに絞ってレビューしていきたい。完全にPixel 4のダイマのつもりでこのエントリを書いています。おすすすめ。


トップショット


Google Pixel:トップショットで撮影 篇

 ミスショットばかりを集めた映像のラストに「失敗写真にさようなら」。めちゃくちゃ心強い。この機能を使ってみたくてPixelシリーズを選んだと言っても過言ではない。なにしろ動き回る推しを撮らねばならないので、事故画は許されないのだ。

 トップショットは、通常の写真+前後3秒間の映像を記録して撮影するモーションフォトから、AIが「これがいちばんよいのでは?」最良の瞬間を提案してくれる機能。すごい。

 モーションフォト≠連写であるのがミソ。連写だと見返しながらこれはブレてる〜、これはブレてない〜って仕分けしないといけないけど(そしてだいたいブレている、かなしみ)、トップショットはAIが自動的にピントや目線が合ったものを選んでくれるのでめちゃくちゃ便利です。

 加えて、AI任せでなく自分で選びたいおたくも安心。




 保存された部分は全てキャプチャ可能。おたくはカメラロールの整理が出来ない生き物なので、この機能はこの先のおたく人生においても間違いなく重宝していくことでしょう。


超解像度ズーム

 今回めちゃくちゃ助かった機能。最大8倍までのズームが可能で、離れた被写体にズームしても細部まで綺麗に撮れるのが特徴。ガビガビしないのが最高。


 クソ席から8倍ズームを使用して撮影した推し。よき表情ですね。

 望遠レンズに加え、潰れてしまった部分の写真の粒をAIが自動補正して色調を整えてくれるため綺麗に映る仕様。よくわからんけどAIえらい。Pixel 4をおすすめしてくれた某ショップのお兄さんいわく、自分では目視できないほど遠くにある看板の文字をこの機能で撮影すると、撮った写真では文字が読めるようになるらしい。めちゃくちゃくわしく話してくれるお兄さんに対し、さすがに離れた場所から推しを撮りたいだけとは言えなかった。


使用しなかった機能

ポートレートモード

 静止している対象を撮影するならともかく、会場内を歩き回っている推しを撮影するには不向きと考え、今回は封印。撮影後にぼかしの焦点や量を変更できるのが高ポイント。


 イベントで引いた1,000円のキットカットと狡噛さん*1のアクスタをポートレートモードで撮影してみました。めちゃくちゃ高精度なので、何ショットかはポートレートでも撮ってもよかったかも。


夜景モード

 夜景でも非常に明るく映る。三脚を使えば天体写真の撮影も可能らしい。

 手数料カフェeプラスリビング、照明がアレ(オブラート)なので推しが動かないならワンチャン夜景モード使ってみてもよかったけど、撮影後数秒待って夜景モードの処理をかけないといけないため今回は封印。


プレイグラウンド

 ポケモンを現実世界に召喚できる機能(そうか?)

 AR機能によって動き回るポケモンたちと写真が撮れる。これ、動画を載せられないのが悔しいんだけど、ピカチュウめちゃくちゃ動くんですよ。手を画角に入れるとピカチュウが手乗りしてくれるのめちゃくちゃかわいい。


 これは名探偵ピカチュウに襲われる執行官(のアクスタ)の図。

 事務所へ 推しのARがほしいです おたくより


反省点

モーションフォト、連続使用できない

 イベント昼の部の写真を見返していて、モーションフォトで撮影したつもりが通常撮影になっている写真が数枚あった。どうやらモーションフォト前後三秒間の記録が完了する前にシャッターを切ってしまうと、自動で通常モードに切り替わるのが原因だった模様。シャッターを切るのに必死で気づかなかったのと、日常でモーションフォトをぶん回して連続使用する機会がなかったので盲点だった。夜の部参加時には無事改善。


結果ブレる

 これはPixel 4が悪いのではなく撮影者のメンタルの問題です。推しを合法的に撮影できるというシチュエーションにテンションが爆上がりしてしまい、推しがいかに時間をかけてゆっくり会場内を歩き回ってくれても、近くに来たら顔が良すぎてブレるし、こればっかりはPixel 4を責められない。
 もう撮影タイムが恒例になって二年くらい経つけど、近くに来てくれたときの写真とか目線くれてる写真は全部ブレてる。草。


さいごに

 予想以上にいい仕事をしてくれたPixel 4、これからたくさんこのカメラで思い出を蓄えてゆくことでしょう。

 今年は推しの活躍をたくさん見られた一年だと思っていたけど、今年携わった作品をどうやって作っていったかとか、撮影の裏話をたくさん話してくれて嬉しかったし、やっぱり俳優として役と向き合っている推しが好きだなあと改めて実感した一日でした。最後におたくがまじめなことを言っても、茶化さないで応じてくれるようになったのが感慨深い。

 イベントの最後の挨拶で、(おたくが)毎日を頑張る理由に自分がなれるよう精進する(意訳)って言葉にしてくれたのも嬉しかった。

 数年前に界隈をざわつかせた伝説のイベント*2を近々企画されているようなので、実現するかはわからないけど貧乏おたくは貯金頑張りますぴえん。


 今日は猫ひた観覧! おわり。






*1:舞台版「PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1-犯罪係数-」

*2:久保田悠来 42万」でぜひ検索してみてください

推しが『猫のひたいほどワイド』新MCに就任して1クールが経ったので雑感を書くよ/猫ひた観覧まとめ

 今日から2クール目に突入してしまいましたわはは

f:id:edmm_yummy:20190810020136j:plain



 舞台上で猫になってしまうほど*1猫といういきものを愛してやまない推し・久保田悠来さん(38歳・俳優・神奈川県平塚市出身)が、2019年4月よりtbk「猫のひたいほどワイド」月曜日のMCにめでたく就任されました!


 主演舞台「仮面ライダー斬月」大千秋楽の翌日、4月1日の初回放送から7月1日でちょうど1クール。久保田さんいわく“第一章”、無事の完走おめでとうございます!!!

 わたしも3月の舞台斬月から7月の映画GOZEN初日舞台挨拶まで、自宅(東北地方)と京都東京名古屋大阪+週1横浜を全力で飛び回っていたので、7月はめちゃくちゃ在宅しました。


──2019年4月1日、猫ひた新MCとして颯爽とお茶の間に登場した久保田悠来さん。就任当日が新元号発表と被るというまさかの奇跡を起こした彼の猫ひた初任務がこちら。



 遡ること約5ヶ月前、舞台斬月へと通うため日本青年館と職場をエンドレスループしていた3月中旬、突如発表された久保田さんの猫ひたレギュラーメンバー加入のニュースは寝耳に水でした。

 猫ひたの存在は知っていたものの(『オガッタ!?』の神奈川県版くらいの認識)、放送圏外に住んでいる身としては観覧システムを含めたすべてが未知の領域で、観覧予約ひとつ取ってもハードル高いな〜と二の足を踏みました。前年度からの出演者が多いためにTwitterにも詳しい観覧方法のフローがなく、観覧予約確定までの情報収集にとても苦しんだので、自分のためにも予約から観覧参加までの流れを記録しておこうと思います。どなたかのご参考になれば幸いです。



※2019/7/1時点の情報です。
2022年現在、猫ひたのスタジオ観覧は行われていないようです。あくまで過去の記録であることをご了承の上、ご覧ください。


番組観覧予約方法

f:id:edmm_yummy:20190810020325j:plain


 横浜メディアビジネスセンター1階、ハーバーズ・ダイニングスタジオエリアにて、ランチをしながら生放送中(12:00~13:30)の番組観覧ができます。観覧の際は要予約。

 現在の予約方法は、電話予約店頭予約の2パターン。


電話予約

受付時間:平日14:00~18:00
必要事項:予約希望日 / 氏名 / 人数

予約の際「初めての観覧である」旨を伝えると、スタッフの方から入場時の流れについて大まかな案内があります。

店頭予約

受付時間:平日11:30~
必要事項:予約希望日 / 氏名 / 人数

当日観覧終了後に次回以降の観覧予約が可能。


集合~入場受付

入場開始:11:30~
オンエア:12:00~13:30
※途中入場可

 早めに入場するとリハや立ち位置確認をしている出演者が見られることも。借り隊メンバーはこのとき既に衣装のツナギやTシャツに着替えていますが、久保田さんだけは私服のままリハに参加していることが多い印象です。

入場受付

・ランチセット代金精算
・座席番号確認

 入場後左手側の受付カウンターにて、ランチセット代金1,000円を精算。スタッフの方へ予約名を伝え、座席番号相席の有無を確認します。後方席でない限りは相席になることがほとんどな気がします。

ランチセット

 ランチセットの内訳はパン・一口サイズのお菓子・ドリンクバーの3点。フードコーナーに用意されているパンとお菓子を1つずつ取って着席。

 ドリンクは収録中でもおかわり自由ですが、熟練の猛者たちは意地でも席を立たねぇ……って感じでカップ2個持ちで観覧されている方が多いです。


座席

f:id:edmm_yummy:20190702081001j:plain

 ハーバーズダイニングの見取り図が公開されていたので、それを元にざっくり作成してみました。

 スタジオに向かって4~5列の長机(観覧の人数によって列数は変動)+両側に椅子のスタイル。

 観覧エリアとスタジオ部分はベルトパーテーションで区切られ、スタジオ部分の最奥にMCテーブルや借り隊の雛壇、壁に沿って潜入リポートコーナーのパネルなどが配置されています。

 後述するアフタートークでは観覧エリアのパーテーション前まで出演者の方々が来てくれるのですが、久保田さんが小声でボケても観客がそれなりに聞き取れるレベルの距離感です。まあまあ近い。

 オンエア中はカメラが被って観覧エリアから出演者が見えなくなることもあります。特に潜入リポートコーナーではワイプ撮りのため出演者にカメラが寄るので、席によっては推しがまったく見えなくなる時間があります。

 スタジオの左右には大きな壁掛けのモニターやスクリーンがあるので、推しが見えないときは潔く番組を楽しみましょう。わたしはスタジオでしか猫ひたが観られないので、潜入リポートコーナーはモニター観て普通に楽しんでます。


 予約時に座席は確定しているため、放送開始時間を過ぎた場合でも途中入場は可能ですが、机と机の間の通路が死ぬほど狭いので、遅れて入るとめちゃくちゃ気まずい思いをします。


観覧スタート

 本番前、ディレクターらしき方から猫ひた収録中の注意事項について案内があります。

写真、動画は撮影不可
出演者への声かけ、プレゼント類、手紙などは禁止
本番中拍手をお願いします.etc

 出演者たちがスタジオ入りする際、観覧エリアにご挨拶に来てくれます。谷水くんとやかわさんは観客への声かけがホスピタリティに溢れまくっていてびびる。レギュラー4年目の貫禄をひしひしと感じます。推しは「よろしくお願いしま〜す」って言いながら左右にちっちゃく頭下げててかわいい。

 放送スタート時、観覧エリアの観客がカメラに容赦なく抜かれます。神奈川のお茶の間に自分の顔面が晒されたくない方は自衛しましょう。わたしはもう手遅れです。


 生放送中はVTRを見てリアクションする推しが見られたり*2CM中にメンバーと談笑する推しが見られたり、エプロンを付けてもらう推し*3が見られたり、小道具を気に入って遊んでいる推しが見られたり、岡村アナよりも念入りにメイク直ししてもらっている推しが見られたり、ボケてすぐにドヤ顔している推しが見られたりします。



 毎週スタジオで観ていると、久保田さんと月曜メンバーの距離が徐々に縮まっているのが伝わってきて非常にエモい。やかわさんがボケを拾ってくれたときの笑顔がものすごく嬉しそうなんですよね……後ろの雛壇にいる北川くんからは「もっとデカい声でボケてくれ」とアフタートークの際にダメ出しをくらっていて、それは本当にそうなのですが、MC陣は借り隊雛壇に背を向ける配置となっているため、小ボケを繰り出しても借り隊が拾えないという災害が頻繁に発生しています。


アフタートーク

 番組終了後5分~15分程  ※月曜日の場合

 曜日や出演者によってか~~~~な~~~~り変動する模様。火曜から木曜の観覧をしていないので定かではないのですが、Twitterなどのレポを見る限りでは月曜のアフタートークは他の曜日より短いっぽい。*4月曜メンバーのアフタートークはみんな舞台出演等で忙しいため近況報告が多く、だいたい久保田さんの「先週何してた?」を皮切りに話題スタート。


おまけ

「健康!歯っピーライフ」コーナー収録

f:id:edmm_yummy:20190703080320j:plain

現役の歯科医が登場し、健康に深く関わる「お口」のケアについて詳しく紹介する。

(Wikipediaより引用)

 サンスター提供、白衣の久保田さんが観られる天才のコーナー。毎月中旬頃、アフタートーク終了後に収録。観覧も可能。

 ゲストの歯科医の先生がボケ殺しの才能に溢れており久保田さんのボケが永遠に貫通しないので、高度な漫才を見ているかのような錯覚に陥る不思議なコーナー。※至って真面目な話をしています。完全に漫才の間になっているのが良くない。収録の翌週に放映。コーナー放映中にVTRを観ながら爆笑している月曜メンバーと、はにかんでいる久保田さんは必見。













 アフタートークの内容も放送休止中にまとめられたらいいなあ。この記事の編集を始めたのが7月1日だったのだけど、だらだら推敲しているうちになんと8月19日になりました!本日の放送ではゾンビになっていた推しが番組MCに復帰します。*5


 舞台「仮面ライダー斬月」千秋楽の京都からその足で駆け付け、それから一度も休まずに1クールのあいだ出演し続けた久保田悠来さん。ほんとうにお疲れ様でした!

 久保田さんは直近まで映画の撮影やドラマ「TWO WEEKS」の撮影*6があるので、猫ひたお休み期間中も変わらずお忙しそうでしたが…………ご自愛下さい。わたしも本日の久保田さんのMC復帰と、これからも続いていく東北〜神奈川間の反復横跳び第2章に備えてお仕事頑張ります。


 横浜へ向かう高速バスの車内にて推敲オワリ。









*1:舞台「八王子ゾンビーズ」(2018)

*2:服部くんの潜入リポートのVTRを見て永遠に笑ってるのをよく見る。かわいい。

*3:久保田悠来のワイルドクッキング前

*4:初日に久保田さんが3分くらいで締めに入ったとき、借り隊のみんなが驚いて止めていたくらい短い

*5:映画「八王子ゾンビーズ」撮影の為、8月5日の放送ではtvkの根岸佑輔アナが久保田さんの代打を務めて下さいました

*6:カンテレ火9枠。三浦春馬さん主演。久保田さんは高嶋政伸さん演じる政治家の秘書・間宮裕役として出演中!

映画「サマーソング」感想

 午後からの現場と同じ会場で初日舞台挨拶をやるとのことで、ノリで入ってきました。キラキラなイケメンの波動を感じたかった@シネマート新宿

 吉沢亮くんのおたくがみんな若いので、身内と待機列に並びながら、普段のファン層とのギャップがやばくてヘロヘロになった。推しのファンは年齢層が高い。



 吉沢亮くん初主演作。前情報を一切調べていなかったので、当日まで舞台挨拶登壇者も出演者も誰がいるのか全く把握してないまま観ました。よくよくポスターを見たら、目立つところに馬場良馬さんと和田琢磨さんを発見。

 一昔前によく製作されていた、テニミュ1stキャスト大集合映画(「ローカルボーイズ」とか)にすこし雰囲気が似てる。撮影予算はロカボより高そうですが………
トラウマ持ちの主人公、男同士の友情、ゆるい日常と切なさと心強さと。


 以下、ネタバレありの感想です。

あらすじ
市原健一(イッチー)は憧れの父の不慮の事故により大好きなサーフィンをやめてしまい、それからは親友達と彼女探しをしたり、アイドルの竹原あいこの追っかけをする日々を送っていた。
そんなある日、親友のまこっちゃんとバンズが海に行こうとイッチーを誘う。
海に行く事に抵抗があったイッチーだったが、海の家で働いてる友人のたけしとひろきに会うために渋々海に向かう事に。
その道中で若い女の子のつぐみとえみこと出会った3人だったが、この2人の女性にお金をスラれてしまう。
海の家でたけしとひろきに再会するも、お金をスッたつぐみとえみこまでもと再会してしまう。
果たしてイッチーは再びサーフィンを再開するのか?そして友人やつぐみ達との関係はどうなってしまうのか?

 非常に起承転結の素早いストーリーが特徴の本作、冒頭約10分程で主人公(お亮)がサーフィンへのトラウマを持っていると発覚→親友2人(浅香くん・燈くん)「俺らが一肌脱いで、トラウマ克服させようぜ!→彼女作ろうぜ!(口実)→海に向かうぜ!ここまでおそらく20分くらい?多少の違和感や不自然さも、サクサク進んでいくストーリーの前では塵に等しい。

 23歳の親友三人組、イッチー(吉沢亮)・まこっちゃん浅香航大)・バンズ(赤澤燈)。彼らは将来への漠然とした不安を抱えつつ、それぞれ惰性で日々を過ごしていた。そんな中、イッチーのトラウマ克服のために、まこっちゃんとバンズはある計画を立てる。海に行くのだ。

 イッチーにもう一度、サーフィンをしてほしい。

 彼らは全員童貞。彼女を、ピチピチビキニギャルをゲットし、童貞を卒業しよう! 童貞卒業を口実に、イッチーを焚き付ける二人。

 溜まり場となっているイッチーのアパートで、グラビアアイドルとのエッチな妄想を繰り広げてはゲスい話で大騒ぎ。勇んで海へと向かうところまではいいものの、女性免疫の少なさゆえに行きずりの女にころっと騙され、痛い目を見てしまう。

 イッチーのアパートで三人組がギャーギャー騒ぐシーンでは、撮影中に騒ぎすぎてロケ地のアパートの大家さんに怒られたとのこと。納得。

 そんな彼らの物語に絡んでくるワケアリ女性陣。窃盗癖のある女・つぐみ(筧美和子)とその友人えみこ(天野麻菜)。売れないグラビアアイドル・竹原あいこ(丸高愛実)。そして、三人組の友人たち、たけし(和田琢磨)とひろき(馬場良馬)。

 自分がイッチーたちとドンピシャ同世代なので、自身の境遇と重ねてしまう部分が多かった。
 23ってなんだか中途半端ですよね。大学までのなが~~~~いモラトリアムを抜け出した先に待っているのは、社会人としてはひよっこなのに、年齢的には充分な「大人」。とても宙ぶらりんな心境。仮にイッチーたちが大卒だとして、社会に出て2年目。右も左もわからずとりあえずがむしゃらに働いて1年。2年目ともなると慣れて手抜きを覚え、高かったはずのモチベーションは次第に薄れていく。

 大多数の人々は、23歳にもなれば自分は結局、何者にもなれない「凡人」側の人間なのだと諦めがつく。幼い頃描いたような「大人」になれている人間のほうが稀だ。生活のために仕事をして、お金を稼いで、それなりに道を踏みはずさないよう生きる。そんな中、同級生や友人から結婚の知らせがあったりして、自分はパートナーがいなくて焦ったり、でもまだ自由でいたくて、なんかそういうの。

 だからこそ、ひとつ特別なものだったり、諦めきれない夢を持っているイッチーに、まこっちゃんやバンズたちが期待をかけてしまう気持ちは痛いほどに理解できた。殻に閉じ籠って諦めた顔をしているイッチーに、歯がゆさを感じてしまうのだ。

 たとえば、まこっちゃんは実家の自動車工場を継ぐのだという。彼が昔抱いていた「夢」は劇中で言及されなかったけど、きっとなにかを諦めて、もしくは惰性で選んだ未来だってことが示唆されていた。敷かれたレールを進んでいくことにきっと疑問も抱いたのだろう、だけど。何者にもなれないからこそ、これからも生活をしていくために妥協する。「どどどど童貞ちゃうわ!」って言い出しそうなアホで気のいいまこっちゃんとは裏腹に、ちゃんとこれからのことを考えて生きようとしてるまこっちゃんに感情移入して苦しかった。
※そんなヘビーな映画ではないので安心してお楽しみください

 たけしとひろきは、しがらみに囚われずに好きな仕事を選び、目先の楽しみを優先して生きている。今が楽しいほうがいいじゃん!って言い切れる人は強い。

 まこっちゃんやバンズたちの中でイッチーはきっとヒーローで、普通に憧れて勝手に期待をかけて、挫折をしたら皆で励ます。でも、トラウマを克服したイッチーは彼らからの期待に潰されない。
 「みんなイッチーのことが好きなんだよ」って台詞があるけど、それである程度通じてしまう友人関係って、綺麗事かもしれないけど素敵だなあと思った。世界がやさしい~~~~。程度の大小はあれど、友人同士で憧れを抱き合うことって普通にある。心の片隅で羨ましく思うことだってある。「サマーソング」では、そんなちょっとだけ湿っぽい友情を、とても軽やかに描いている。

 イッチーはじめ3人組の愛すべきおバカ感は見ていて元気になるし、こんなにお顔がいいのに童貞って設定自体破綻するのでは?って思ったけど、女性の扱いやキョドり感も、男3人でいたほうが楽しいし!?みたいな強がりも、グラサンかけてふざけてドヤってるシーンも、海のオーラ(?)を感じるために海に向かってばんざーい!してるシーンも、基本的に偏差値足りてなくて大笑いした。男って馬鹿だよね〜って呆れてしまうような可愛さ。

 浅香くん、キモヲタを演じるのがすごいうまくて、不憫でかわいかった。みんなが集まってるとこで一人だけおかしいテンションになって周りがしらけるの、おたくあるある。三人組でいるときのボケの応酬もそうだけど、ちょっとした掛け合いが自然で楽しい。肉食の女性陣に迫られて股間を撫でられキョドりまくるお亮とともるんは一見の価値あり。

 舞台挨拶ではマスコミ用のフォトセッションタイムが設けられていて、客席後方のムービーカメラに向かって登壇者が手を振るのだけど、お亮の手の振り方がミーアキャットみたいで可愛かった。顔の横でぺぺぺぺぺぺぺぺって小刻みに振るの。ずるい。

「青春を謳歌できなかった人。周りの環境がどんどん変わって、自分だけが置いてけぼりな気がする人。あと一歩が踏み出せない人。そんな人たちの背中を押す力の1つになれればうれしいかなと思います。男ってどこまでもバカで愛おしい生き物だなと、感じてもらえる作品です。」
吉沢亮が映画初主演 中前勇児監督『サマーソング』9・17公開 | ORICON NEWS:引用)


 たとえば日本中がパニックに陥ったりとか、隕石が落ちたり、大事件が起こるような作品ではない。これからも彼らのゆるい日常は続いてゆくのだろうけど、今回の出来事をきっかけに、ちょっとだけ世界はきらきらして映る。彼らの未来が少しだけ想像できて、なんだか自分まで前向きになれた。

 お亮、ウェットスーツが異様に似合う。本格サーフィン映画って銘打ってあったけど、主人公がサーフィンするのはラストシーンだけでした。何がサマーソングだったのかはわかりません。






  • 2019/8/13加筆修正・追記

 本作のDVDが未だ発売されていないことを知り驚愕しています。推しの作品が上映イベントまでやった上お蔵入りするの、わたしも経験がありますが*1切ないですよね………。

*1:映画「ハピネスインリトルプレイス」(2012)