はきだめにつる

いつまでも輝いていて

朗読劇「ラヴ・レターズ~2016 The Climax Special~」(青木玄徳×遠藤久美子)感想

f:id:edmm_yummy:20190819112829j:plain

「ラヴ・レターズ~2016 The Climax Special~」
青木玄徳さん&遠藤久美子さん)
観劇してきました。

ラヴ・レターズ〜2016 The Climax Special〜

「ラヴ・レターズ」の本拠地PARCO劇場で上演されるということで、かなり楽しみにしていた公演。


一幕


メリッサ(演・遠藤久美子)

遠藤さん、第一声からメリッサだった!
高めの声で綴られていく少女期のやりとり。


アンディーから届いた手紙を読むメリッサ。

つまんない、うんざり!しーらない!

彼女の心の声が聞こえてきそう!

無邪気で天真爛漫で、彼女いわく「性悪女」なのだろうけど愛嬌たっぷりのメリッサ。恋多き早熟な女の子。
少女から女性へと花開いていく瞬間というのが、これでもかと伝わってくる熱量。蝶のようにひらひらとアンディーをかわし、奔放に生きる彼女の姿が目に焼き付いている。

役柄上どうしても嫌な女になりがちなのに、どこまでも「一人の人間」として憎めない、魅力溢れる遠藤さんのメリッサ。



アンディー(演・青木玄徳)

この朗読劇の第一声は、アンディーが送った一通の手紙から始まる。

生まれて初めてメリッサに宛てた手紙の、書き慣れない、型にはまったぎこちない文章。
青木さんが舌ったらずに表現したそれは、何度かやり取りを交わすうちに声音や表現が彼らしく形づくられていく。次第に生き生きと綴られていく青い感情。

甘酸っぱいやりとりが微笑ましい思春期の二人。

青木さん自身が評するように、確かに少し頼りなさそうなアンディーだったと思う。

メリッサからの返信に舞い上がっては沈み、失敗したらシュンと落ち込むアンディー。育ちのいいお坊っちゃんらしく、世間知らずで聞き分けの良いこども。

寄宿舎生活で培ったあれこれをメリッサに手紙で報告するときの得意気な口調がかわいい。メリッサが呆れていることに気づかない、女心のわからない少年。

某舞台挨拶以来、青木さんのくるぶしばっかり見てしまうのだけど、裾が少しだけ短くてばっちりくるぶしがのぞいていた。最高!

⌈きょうだい以上には思えないからステディにはなれないのよ」とメリッサに一蹴されてしまうアンディーだけど、弟っぽさに溢れているのでそりゃなれないよな、と思ってしまった。穏やかで優しい青木さんのアンディー。

感情の渦がどっと押し寄せるような熱量の遠藤メリッサとは対照的に、青木アンディーは穏やかなリズムを保っていたので、絶妙なバランスのカップルだったと思う。

青木さんの声のトーンが一定して聞きやすく、台詞がすとんと降りてきて心地よかった。




幼いころからずっと続けてきた手紙のやりとりの中でなら、二人は本音で会話が出来る。

⌈手紙に自分を乗せて、相手へ自分の全部を送る」と言うアンディー。
⌈そんな紙切れよりも生身のアンディーに会いたい」と主張するメリッサ。それなのに、生身のアンディーにいざ会ってみても、肩越しに手紙の中の彼を探してしまうのだと言う。

二人の間に生じたわずかなねじれは、成長するほど深刻なものへと発展していく。



二幕



二幕が始まり、赤い口紅をさした遠藤さんが登場したとき思わず息を飲んだ。

少女から円熟した大人の女性へ。

アンディーから届いたクリスマスや年始の挨拶に、気にくわないような、興味もないような、妬ましいような表情を覗かせながら目を通す。

アンディーは家庭を持ち、法曹界デビューを経て上院議員まで上り詰めていた。一方でメリッサも結婚し、画家として評価され、華々しく活躍していた。しかし一転、ドラッグやアルコールに溺れ、夫や子供たちとは泥沼離婚。メリッサは転落人生の真っ只中にいた。

アンディーから届く手紙もメリッサ個人へと宛てた特別な手紙ではなく、やがて形式ばったものが混じるようになり怒るメリッサ。


くるくるとめまぐるしく変わる表情が魅力的だった一幕のメリッサとはうってかわって、女の情念が伝わる二幕。

ときにお酒の入ったグラスを持って泥酔状態で、ときにドラッグで躁鬱になりながら、彼女はアンディーへとペンを走らせる。


普通の椅子に座っているのに、安楽椅子に腰かけているような錯覚に陥るくらい、彼女の世界に引き込まれた。年齢を重ねてやつれ、精神を病んでしまったメリッサなのに、とても美しいと思った。



晩年、二人は始めて結ばれる。50年越しに初恋が成就し、秘密の逢瀬を重ねる二人。アンディーへの依存が深まるメリッサと、のらりくらりとかわしているようでいて彼女を振りほどけないアンディー。

演者によって抱くアンディー像がまったく異なることを個人的にいちばん実感したのがこの場面でした。


いよいよメリッサとアンディーの関係が世間へと明るみになり、記者に詰め寄られるメリッサ。
アンディーを頼るも、何を言っても「無視」と言い、逃げ回るアンディー。

青木アンディーは遠藤メリッサに対して強気になれない雰囲気が滲み出ていて、メリッサと一緒に困惑しながら、なんとか体裁を繕おうとオロオロ狼狽える感じが人間臭くてとても良かった。情に訴える余地がありそうなアンディー。

このやりとりを観ていて、久保田アンディーは「無視」の声音がぴしゃりと冷たくて、こんなときばっかりはね除けて本当にずるい男だな~!って沸き散らかしたのを思い出した。

不倫騒動以来、関係を絶ったアンディーとメリッサ。60を過ぎ、メリッサは故郷へと戻り療養生活へ。それを知ったアンディーはメリッサの母親を通じて会いに行くことを彼女へ告げる。しかしアンディーを拒むメリッサ。

メリッサから最後の手紙がアンディーに届き、彼は最後の手紙を綴る。


泣きじゃくる子供のようなラストシーンのモノローグ。
顔を合わせることはなくても、手紙によって寄り添い、彼女を長年支えてきた穏やかな優しさ。

公演を全体通しても、アンディーの言葉はメリッサへの柔らかな愛に満ちていて、「愛を込めて」という台詞にたしかな重みがあった。半身というよりも姉を亡くした感覚に近いような気がする(なにしろ弟みがすごいので………)


このとき、手紙に目を落としていたメリッサが劇中で初めて顔を上げ、アンディーを真正面から見据える。アンディーからの言葉を受け、照れたような、慈しむような声音で応えるメリッサに涙が止まらなくなってしまった。


カーテンコール



終演後、ライトが灯り、顔を上げた二人の表情がおもしろいほど対照的でした。晴れやかな表情の遠藤さんに対し、青木さんはかなり消耗していた。

Wカーテンコールの恒例(?)でアンディー役のキャストがメリッサ役をエスコートして登場するのだけど、青木さんが腕を組んだまま舞台上の水を一気飲みしたのでちょっと面白かったし、あまりの狼狽ぶりに遠藤さんも笑ってた。



2015年、2016年と2パターンのカップルを観て、役者さんによって役の解釈は千差万別だと改めて感じた「ラブ・レターズ」。役者さんの性質や演技の切り口によってぜんぜん違う人物像に見えるのも興味深い。

正直に言うと青木さんの晩年アンディーの解釈が斬新でちょっと面白かった。青木さんの思う還暦、老けすぎでは


久保田さんの演じるアンディーの先入観があったので、一幕は思春期真っ只中のやんちゃ小僧が出てくるかな?と思ったら、青木さんのアンディーは弟気質の穏やかな優等生で本当に驚いた。
1月にやっていた松田凌くん&内田理央ちゃんのカップルも観てみたかったなあ。


PARCO劇場は閉館となってしまうけれど、「ラヴ・レターズ」はずっと続いていってほしい。


このまま500公演を迎えられますよう、愛を込めて。


500回目のアニバーサリー公演では役所さんと大竹しのぶさんの初演カップルが観てみたいなあ、なんて。


親愛なる、から始まる手紙はいいぞ。