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はきだめにつる

とりとめのないこと

朗読劇「ラヴ・レターズ」観劇感想(後編)

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朗読劇「ラヴ・レターズ」観劇感想(前編) - はきだめにつる



ようやく本題!


「ラヴ・レターズ 2016 The Climax Special」
(青木玄徳さん&遠藤久美子さん)
観劇してきました。

本拠地パルコ劇場で上演されるということで、かなり楽しみにしていた公演。


遠藤さんが第一声からメリッサだった!
高めの声で綴られていく少女時代のやりとり。


アンディーから届いた手紙を読むメリッサ。

こーんな文章つまんない、うんざり!しーらない!

そんな心の声が聞こえてきそう!無邪気で天真爛漫で、彼女いわく「性悪女」なのだろうけれどどこか愛嬌のあるメリッサ。恋多き早熟な女の子。
少女から女性へと花開いていく瞬間というのが、これでもかと伝わってくる熱量。蝶のようにひらひらひらひら、アンディーをかわし、奔放に生きる彼女の姿が目に焼き付いている。
役柄上どうしても嫌な女になりがちなのに、どこまでも「一人の人間」として憎めない、魅力的な女性像があった。




 相対する青木さんのアンディー。
この朗読劇の第一声は、アンディーが送った一通の手紙から始まる。
はじめてメリッサに宛てた手紙の、書き慣れない、型にはまったぎこちない文章。舌ったらずに表現されるそれは、何度かやり取りを交わすうちに声音や表現が彼らしく形づくられていく。次第に生き生きと綴られていく青い感情。甘酸っぱいやりとりが微笑ましい思春期のすがた。

青木さんが評するとおり、たしかにちょっと頼りなげなアンディーだったと思う。

 メリッサの返信に舞い上がっては沈み、失敗したらシュンと落ち込むアンディー。お育ちのいい坊っちゃんらしく、世間知らずで聞き分けの良いこども像。
寄宿舎生活で培ったあれこれをメリッサに手紙で報告するときの得意気な口調!かわいい!メリッサが呆れていることに気づかない、女心のわからない少年。

 某舞台挨拶以来、青木さんのくるぶしばっかり見てしまうのだけど、裾が少しだけ短くてばっちりくるぶしがのぞいていた。最高かよ。

きょうだい以上には思えないからステディにはなれないの、とメリッサに一蹴されてしまうアンディーなのだけど、弟みにあふれているのでそりゃなれないよな、と思ってしまった。穏やかで優しいアンディー像。

 感情の渦がどっと押し寄せるような熱量の遠藤メリッサとは対照的に、青木アンディーは穏やかなリズムを保っていたので、絶妙なバランスのカップルだったと思う。

青木さんの声のトーンが一定して聞きやすく、台詞がすとんと落ちてきて心地よかった。



「手紙は滅びゆくアートである」

この朗読劇中随一の素敵な台詞だと思う。

幼いころからずっと続けてきた手紙の中でなら、ふたりは本音で会話ができるのだ。

 手紙に自分を乗せて、相手へ自分の全部を送るのだと言うアンディー。そんな紙切れよりも生身のアンディーに会いたいのだ、と主張するメリッサ。それなのに、生身のアンディーにいざ会っていても肩越しに手紙の中の彼を探してしまうのだと言う。そうしたわずかなねじれは、二人が成長するほど深刻なものへと発展していく。




 二幕が始まって、唇に紅をさした遠藤さんが登場したとき思わず息を飲んだ。

少女から青年期を抜け出して、円熟した大人の女性へ。

アンディーから届いたクリスマスや年始の挨拶に、気にくわないような、興味もないような、妬ましいような表情を覗かせながら目を通す。

 アンディーは家庭を持ち、法曹界デビューを経て上院議員まで上り詰めていた。一方でメリッサも結婚し、画家として評価され、華々しく活躍していた。しかし一転、ドラッグやアルコールに溺れ、夫や子供たちとは泥沼離婚。メリッサは転落人生の真っ只中にいた。

アンディーから届く手紙もメリッサ個人へと宛てた特別な手紙ではなく、やがて形式ばったものが混じるようになり怒るメリッサ。


 くるくるとめまぐるしく変わる表情が魅力的だった一幕のメリッサとはうってかわって、女の情念が伝わる二幕。ときにお酒の入ったグラスを持って泥酔状態で、ときにドラッグで躁鬱になりながら、彼女はアンディーへとペンを走らせる。


 普通の椅子に座っているのに、安楽椅子に腰かけているような錯覚に陥るくらい、彼女の世界に引き込まれた。年齢を重ね、やつれ、精神を病んでしまったメリッサなのに、とても美しく印象的だった。


貴方は私のアンカーマンになってしまったのよ

 晩年、二人は始めて結ばれる。50年越しに初恋が成就し、秘密の逢瀬を重ねる二人。アンディーへの依存が深まるメリッサと、のらりくらりとかわしているようでそれを振りほどけないアンディー。

役者さんによって抱えるアンディー像がまったく異なることを個人的にいちばん実感したのがこの場面でした。



 いよいよメリッサとアンディーの関係が世間へと明るみになり、記者に詰め寄られるメリッサ。
どうしたら、とアンディーを頼るも、何を言っても「無視」と言い捨てるアンディー。

 青木アンディーはなんというか、遠藤メリッサに対して強く出られない感じが随所に滲み出ていて、メリッサと一緒に困惑しながら、なんとか体裁を繕おうとおろおろ狼狽えている人間くささがあったように思う。

このやりとりを観ていて、久保田アンディーは「無視」の声音がぴしゃりとして冷たくて、こんなときばっかりずるい男だな~!って沸き散らかしたのを思い出した。

 不倫騒動以来、関係を絶ったアンディーとメリッサ。60を過ぎ、メリッサは故郷へと戻り療養生活へ。それを知ったアンディーはメリッサの母親を通じて会いに行くことを彼女へ告げる。それを拒むメリッサ。

 メリッサからの最後の手紙がアンディーに届き、彼は最後の手紙を綴る。


 泣きじゃくる子供のような最後のモノローグ。
顔を合わせることはなくても、手紙によって寄り添い、そして彼女を支えてきた頼りなくて穏やかな優しさ。
公演を通して、アンディーの一言一言はメリッサへのやわらかな愛に満ちていて、「愛を込めて」という台詞に重みがあった。半身というよりは姉を亡くした感覚に近いような気がする(なにしろ弟みがすごいので………)


このとき、劇中で初めてメリッサが顔を上げ、アンディーを見据える。アンディーからの言葉を受けて、照れたような、慈しむような声音で応えるメリッサに涙が止まらなくなってしまった。


 終演後、ライトが再度灯り、顔を上げた二人の表情の違いがとても印象的でした。青木さん、かなり消耗していた。笑

それぞれ上手下手へはけていって、再登場したとき恒例?でアンディーのキャストさんがメリッサをエスコートするのだけど、青木さん、謎に狼狽えていて、2回目のカテコで水をぐいっと煽ってて笑ってしまった。遠藤さんも笑ってた。素でかわいいかよ。



 役者さんによってやっぱり役の解釈は千差万別で、どの解釈も私は好きです。役者さんの性質や演技の切り口によってぜんぜん違う人物像に見えるのも、リーディングドラマならではだと思いました。
正直に言うと青木さんの晩年アンディーの解釈が斬新すぎてちょっと面白かった。青木さんの思う還暦、老けすぎでは


 久保田アンディーを先にみていたので、前半一発目は思春期真っ只中のやんちゃ小僧が出てくるかな?と思ったら、青木アンディーは弟気質の穏やかな優等生で本当にびっくりしてしまった。1月あたりにやっていた松田凌くん&内田理央ちゃんのも聴いてみたかったな~~~という気持ち!


パルコ劇場は閉館となってしまうけれど、「ラヴ・レターズ」はまだまだ続いていってほしい。
好きなフレーズがたくさんあります。


このまま500公演を向かえられますよう、愛を込めて。


500公演目のアニバーサリーでは役所さんと大竹しのぶさんの初演カップルが観てみたいなあ、なんて。


親愛なる、から始まる手紙はいいぞ。