はきだめにつる

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映画「ライチ☆光クラブ」感想

 映画『ライチ☆光クラブ』観てきました。



 池袋HUMAXシネマズでは、劇場ロビーにゼラとジャイボの劇中衣装が展示されていました。



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 漫画版をおおむね忠実に再現してはいるものの、映画版『ライチ☆光クラブ』は陽キャ映画の雰囲気がラストシーンまでどうしても拭えず、個人的にはキャラクターの再現度が異様に高い別の作品という印象を抱きました。



 漫画版『ライチ☆光クラブ』は、少年たちの美しいグランギニョル=残酷劇に至るまでの物語。
 夜な夜な廃墟に集う9人の少年たち、“甘美なる機械”ライチの完成、彼らの“崇高なる目的”のために誘拐された少女・カノン。彼女を巡り生じる軋轢、そして光クラブの崩壊。漫画版では『ライチ☆光クラブ』の前日譚として、小学生時代のゼラやタミヤを描いた『ぼくらのひかり☆クラブ』が刊行されています。


 映画版では『ぼくらのひかり☆クラブ』からいくつかのエピソードを引用しているのですが、光クラブメンバーの学校生活では外部生徒との交友がそれなりにあることが描写されているため、光クラブから逃げられないという強迫観念はだいぶ薄味に見えました。光クラブが消滅して困るメンバー、いる?(いなそう)



キャスト別雑感

 公式からビジュアルが出た時点でジャイボ……美………と思っていたのですが、期待以上でした。


ジャイボ(演・間宮祥太朗

 キャスト発表の時点で、あまりイメージのない間宮さんがジャイボ?!と驚いたのですが、めちゃくちゃ杞憂でした。

 映画の中には二次性徴に抗い、敗れて諦観するジャイボがいました。

 「キャハッ☆」が独特のイントネーション。目の奥が常に憂いを帯びていて、光クラブの誰よりも大人びた少年。ゼラを含めた光クラブのメンバーをチェス駒に、ジャイボ自身をプレイヤーに揶揄する台詞があるけど、間宮さんのジャイボは正しく超越者として描かれていた印象です。


 ゼラ役の古川さんより間宮さんのほうが身長が高いので、ゼラと向き合ったときの身長差が絶妙でした。ゼラの身長を超え、声変わりが始まり、ゼラの興味がカノンへと移ってしまったことに激しく憎悪を燃やすジャイボ。彼はきっと自分の中に醜い臓物が詰まっていることも理解している。

 漫画版ではゼラ以上の狂人として描かれるジャイボだけど、間宮さんの演じるジャイボはどこか狂いきれないままで超然としていて、間宮さんの掠れた声で「もう声変わりが始まってきたよ」って言うの、儚すぎて泣いた。


ゼラ(演・古川雄輝

 姫カット眼鏡が似合いすぎる。キラキラ王子様のイメージが強い古川さんが真性のドクズを演じているので、良い声で罵倒されるニコが羨ましかったです。

 見ていて吐き気がするほどのクズをキレッキレに演じていらっしゃるのですが、流石にゲロ→失禁→内臓びろんのコンボ(原作準拠)は古川さんのイメージ的にNGではないのでしょうか……

 帝王然としているゼラが本当はどうしようもなく凡人で、他愛もない動機からタミヤたちの光クラブを乗っ取ったと明かされるエピソードが改変され、映画版では生来おかしな子供として描かれています。漫画版の“愚かで可哀想なゼラ様”としての側面は失われ、ただただ自業自得な独裁者としての最期を迎えているのが痛々しかった。



タミヤ(演・野村周平

 タミヤもジャイボ同様、漫画版よりずっと大人びた印象を受けました。「真実の弾丸」の二つ名にふさわしい活躍っぷり。ゼラよりモテる設定には納得しかないし、カノンはライチを捨ててタミヤと逃避行したほうが間違いなく幸せになれる。

 海辺のシーンでダフやカネダとはしゃいでいるのが中学生っぽくてとてもかわいかった。

 パチンコの名手という設定がなくなり、武器が釘ガンに改変されたことで、ダフの処刑シーンが非常にアッサリになってしまっていたのが個人的に少し残念でした。


ニコ(演・池田純矢

 どのシーンも素晴らしくニコでした。誰よりもアインツであれ。

 常に劣等感に苛まれていて、漫画のニコのようにどんでん返しも与えられず、惨めに人生を終えるニコがとても悲しかった。最期くらい描写してくれ!

 池田純矢さんの怪演!えぐりだした片目をゼラに差し出すシーン、鬼気迫る表情に背筋が寒くなりました。


雷蔵ちゃん(演・松田凌

 かわいいの権化。鼻歌ふん♪ふん♪しながらお裁縫してるの、オカマ力が高すぎる。カノン役の中条あやみさんが現場入りするまで、雷蔵ちゃんがちやほやされていたというエピソード*1にも納得。
漫画版の「顔だけはやめて!」のシーンが個人的に好きなので、映画版でもこの台詞が聞けて満足でした。


ヤコブ(演・岡山天音)、カネダ(演・藤原季節)、ダフ(演・柾木玲弥

 踏んだり蹴ったり三人衆、というかんじ。(まとめてごめんなさい)

 それぞれ最期が改変されていて、カネダがいちばん踏んだり蹴ったり感あった。ダブの例のシーンは(ダフの荒い息遣い)って字幕なら絶対に出てたと思うし、熱演でした。


デンタク(演・戸塚純貴)

 ライチに「自分は人間」というプログラムを書き加えた張本人。「美しい」の概念をライチに教え込むシーンでのママみの強い口調がかわいかった。

 ライチがカノンを誘拐してきたシーン、ほくそ笑むゼラ様の後ろでガッツポーズをしながら菩薩のような顔で喜んでいて、思わず観ているこちらの表情筋がゆるゆるになりました。


カノン(演・中条あやみ

 映画版カノンはメンタルが強く芯のある女の子という印象。
 美少女×ロボット×廃工場。耽美だ~~。ゼラの言う「廃墟の恋人」が、中条さん演じるカノンとライチにとても似合っていました。華奢で清廉で、漫画版のカノンそのままの美少女感。

 しかしカノンとライチに割かれる尺の少なさよ。唐突に登場するオルガン、唐突なレクイエム、唐突なライチへの「好きよ」、ええ…………カノンって実は惚れっぽいのか……………

 ラスト付近の連続グロコンボは中条さん演じるカノンの美しさで乗りきった感があります。



まとめ

 一度原作を読んだことがあると舞台設定に若干の違和感を覚えるかもしれませんが、今をときめく若手俳優たちが考えつくかぎりグロテスクに最期を迎えるさまは見ていて圧巻ですし、何より血みどろの中で中条あやみさんの清廉さが際立ちます。ややグロが平気ならぜひ観てほしい作品。(という着地)