はきだめにつる

いつまでも輝いていて

舞台「パラノイア★サーカス」感想

3月2日マチネを観劇しました。

少年社中×東映のコラボプロジェクト。

パンフレットやインタビューを見ていると、この公演が旗揚げというか、“第1弾”みたいな書き方なので、第2弾、3弾と息の長いプロジェクトになったらとても嬉しい。



衣装・ビジュアルと劇伴が好みすぎて、勢いだけで劇場に行った。自分のようにビジュアルにやられて足を運んだ人、絶対にいると思う。絢爛豪華な色彩と退廃的な世界観が奇妙に同居する、とても美しい作品。


華やかな衣装と怪しげな照明を纏った登場人物たちが、次々に舞台上を行き交う。
どこを切り取っても目を惹き付けられてしまう高揚感はまさにサーカスのショーパレード。



劇場へ行く決定打となったのは、「パラノイア★サーカス」公式サイト“キャスト一覧”の写真に施されたとある仕掛け。

瞳を覆い隠した写真が並ぶキャストビジ
ュアル。

一人一人の写真にカーソルを合わせると、隠されていた登場人物の瞳が見開かれる。

まるで夢から覚醒するみたいに。


「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと。」


そう、パラノイアなんですよ!

以下ネタバレ。







雑感



小澤亮太さん×井俣太良さんのインタビュー*1でも言及しているけど、「パラノイア★サーカス」は小説家の主人公が、自ら生み出したキャラクターに翻弄され、やがて彼らによってその妄想世界を崩されていく、というストーリー。

パラノイア★サーカス』―それは、孤島を本拠地とするサーカス団。
見世物は極上の『謎』。

奇妙奇天烈なパフォーマーたちは、謎に満ちた狂気と現実の境目を疾走する。
稀代の大怪盗『カイジン20面相』がパラノイア★サーカスから“あるもの”を盗み出した。
それは『謎』そのものだった。

謎は世界から消え去り、世界は音を立てて崩れ去っていく...。

だが、そこに立ち上がる男がいた。ただ彼は観客だった。
その観客は小説家に憧れ『物語』そのものを愛していた。
彼は依頼を受け、謎のなくなった世界の『謎』を取り戻していく。

消えかかる世界を守り抜くことができるのか?
カイジン20面相の正体は?!
パフォーマーたちの『パラノイア(妄想)』はステージの中で混ざり合い溶け合い、
現代の狂気を映し出す壮大なパノラマへと姿を変える。


スリードがいくつも仕込んであって、終盤に向かってひとつずつそれが解かれていくさまは見ていて痛快でした。

王道のクローズドサークルミステリー。縦横いっぱいに組まれたセットや登場人物の多さから、リアルなサーカステントを連想した。

ところどころに挟まれるギャグ(井俣さんのターン毎公演やってると思うと凄すぎる!)やアドリブの安心感。
アホの明智、ナミコシ警部&ナカムラ刑事の存在が物語の清涼剤だった。

大団円的な収束はまさに仮面ライダーの最終回を連想させるウルトラハッピーエンド。DVDには後日談が収録されるそうです。

パラノイア★サーカス [DVD]

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パラノイア=偏執病から脱却したはずの主人公がスタート地点に回帰するのはある意味バッドエンドじみていたり、ウルトラハッピーエンドの根底には不穏さが見え隠れしていたり。
いろいろと考えてしまう終幕だったのですが、それも含めて「極上の謎」ということで。


登場人物について

江戸川乱歩(演・小澤亮太)

ストーリーテラーと思いきや、謎の中核を担う江戸川乱歩
物語や登場人物に翻弄され、苦悩する場面がとても多い。前半の矢継ぎ早にセリフをまくしたてるシーンは圧巻。静と動のメリハリが凄まじい。

鈴木さん演じる金ぴかルパンとの立ち回りがかっこよすぎる!小澤さんの出世作・ゴーカイレッドを彷彿とさせる回し蹴りがありました!

コバヤシ少年(演・松田凌)

宵の明星、家路を急ぐわらべが笑う!(ばきゅーん)

観客に一番近い目線を持つであろうコバヤシ少年。
松田凌くん、身のこなしがしょうがくごねんせい…………。あちこち跳びはねるので羽織った上着がひらひらひらひら、白いハイソックスとともに視界を揺らす。

編集さんに銃を連射するシーンがお気に入り。


「退屈な日常から脱却したい」と願ってやまないコバヤシ少年。

終盤、物語を終わらせまいと、脱却したかったはずの日常を取り戻すべく何度も“やり直し”を繰り返す。

物語の始まりの台詞から、もう一度やり直そう。何度も何度もやり直しを繰り返すたび、台詞には嗚咽が混じり、言葉尻がほろほろと崩れていく。

パラノイア★サーカスの妄想世界を終わらせたくないコバヤシ少年』と、舞台をまだ観ていたい観客側の感情が、“やり直し”のたびに共鳴してとても切なかった。


アルセーヌ・ルパン(演・鈴木勝吾)

ルパン様のどんでん返し!
正直、キャスト一覧の勝吾くんのビジュアルを見た瞬間にチケットを買っていたので、ビジュアル通りのルパンを期待して劇場へ赴いたら、頭から爪先まで金ぴかのアルセーヌ・ルパンがいて度肝を抜かれた。おまけに舌は緑。癖が強いんじゃ~~~

殺陣で翻るマントと、カーテンコールのお辞儀で恭しくシルクハットを抑える仕草は黄金紳士降臨という感じ。

立ち回りや佇まいが天下一品、シニカルに主人公を翻弄する掴み所のないアルセーヌ・ルパン、最高でした。声が通る通る!

現れては場(と江戸川乱歩)を翻弄して去っていく、道化のようでいてかなりのキーマン。
物語のジョーカー的存在。

仕込みステッキを両手で構えたときの表情が素敵すぎたので、DVDではぜひアップにしていただきたい。



パンフレットと舞台衣装で他の登場人物が皆マイナーチェンジしている中、イン獣だけまったく互換性のない衣装(パンフやビジュアルではモダンガール風の女性/舞台衣装は獣の着ぐるみ)をしているのが気になっていたのだけど、それも結末を知るとなるほど~~!というアハ体験。

サーカス団の口上「恨みつらみも、心の本に書き記す」もしっくりきた。これを踏まえてもう1回観たい!


一度観たからこそ次の種明かしが楽しい舞台。

登場人物とサーカス団の口上は乱歩作品からのオマージュとのことなので、乱歩作品を読破してから観るとまた違った見え方になるのかも。

DVDが待ち遠しい!